双子の妊娠(双胎妊娠)が判明したとき、大きな驚きや喜びとともに、様々な心配を抱えるママもいらっしゃいますよね。
その心配の中でも、双胎妊娠の場合のみ起こりうる特有の現象として気になるのが『バニシングツイン(Vanishing Twin)』。
日本語に訳すと「消える双子」です。
双胎妊娠の約30%以上の確率で発生する現象との報告もあり、比較的高い確率といえます。
医学的に予防することは出来ず、自然現象として捉えるしかないとされています。
今回は、バニシングツインとはどういった現象なのか、一卵性と二卵性での違い、そして筆者の体験談も添えてお話ししますね。
バニシングツインとはどんな現象なの?
双子を妊娠している妊婦さんの子宮内でどちらか1人の赤ちゃんだけが亡くなり、そのまま吸収されて消えてしまう現象のことを「バニシングツイン」といいます。
双胎妊娠とは?
そもそも双胎妊娠とは、大まかに以下のように定義されています。
妊娠初期に受ける超音波(エコー)検査で「胎嚢(たいのう)」という赤ちゃんが入っている袋が1つだけ確認され、その中に2つの胎芽(赤ちゃんのもと)が入っている状態か、または2つの胎嚢があり、それぞれに胎芽が個別に入っている状態を双胎妊娠とみなします。
バニシングツインと双胎一児死亡
そして双子(双胎)妊娠中には、残念ながらどちらか一方の胎児が亡くなる「双胎一児死亡」が起きることも。
妊娠初期であった場合は、亡くなった赤ちゃんがそのまま子宮内で消えてしまうことが多く、これが「バニシングツイン」と呼ばれているのです。
バニシングツインはなぜ起こる?原因と予防方法
バニシングツインは双子妊娠の約10〜30%の確率で起こるとされていますが、いまだに明確な原因が特定されていません。
それゆえに、予防するのは大変難しいと言われています。病院で治療ができるものでもなく、胎児の成長過程の中で自然に起こってしまう症状なのです。
そして双子(双胎)妊娠だけでなく単体妊娠であったとしても、妊娠初期の「早期流産」はどの妊婦さんにも起こりうるもので、その多くの原因は胎児側の問題のことがほとんどです。
「あの時こうしていれば・・・」と自分を責めないでくださいね。
バニシングツインとダウン症との関係は?
早期流産の多くが染色体異常が要因であることから、バニシングツインも同じ理由だと考えられています。
ダウン症との関係を指摘する報告もありますが、バニシングツインが発生する理由については医学的に解明されていません。
一卵性と二卵性では確率は違うの?
バニシングツインの発生頻度は、双子(双胎)妊娠のタイプによっても異なると言われています。
双子が1つの胎盤を共有している「一絨毛膜双胎」の方が、双子それぞれに1つずつの胎盤がある「二絨毛膜双胎」よりもバニシングツインが起こりやすいとされています。
この「一絨毛膜双胎」は一卵性双胎のうち約70%ほどで、「二絨毛膜双胎」タイプは二卵性双胎の大半を占めています。
二絨毛膜双胎の場合は赤ちゃんそれぞれに別の胎盤があるので、もし片方に異変があっても、もう片方の赤ちゃんには影響がない場合が多いです。
筆者の場合は、二卵性双胎の二絨毛膜双胎タイプ。
2つの部屋にそれぞれ赤ちゃんがいる状態で、妊娠3か月の頃、片方の子にバニシングツインが起こりました。
その診断がなされた2週間前に、ごく多量の出血をしており、それが兆候だったとも言えます。
亡くなってしまった子はきれいに姿が見えなくなっていたので、特に処置も必要なく、そのまま単体妊娠として妊娠継続をしました。
一卵性の方がリスクは高い
一絨毛双胎の場合は、1つの胎盤で血液や栄養など全てを共有し、繋がっている状態です。
双方が影響し合って残された赤ちゃんが脳障害を起こしたり、亡くなってしまう危険性もあるため、出産日までは慎重に観察を続けます。
一卵性双胎での妊娠は、初期のバニシングツインに限らず中期以降も赤ちゃんへのリスクや双胎一児死亡の頻度も高いことが分かっており、注意して管理する必要があります。
バニシングツインが起こる時期は?
これまでのケースと研究結果では、バニシングツインが最も起こりやすいのは妊娠6〜7週頃で、それを過ぎた妊娠8週以降はほとんど発生しないとの報告があります。
筆者の時は、もう少し遅いタイミングでのことでした。
妊娠3ヶ月目のある日、おぼろげながら赤ちゃんらしきシルエットが確認出来る頃に受けたエコー検査。
お腹の中を映し出した画像の中には、もう赤ちゃんは1人しかいませんでした。
初期の頃から片方の子は心拍も弱く、お医者さまからもバニシングツインの可能性を告げられていたので、覚悟はしていました。
頭では分かっていたことだけれども「ああ、もうここにはいないんだね」と、どうしようもない悲しみが湧き上がってきて、ただただ涙をこぼしたのを覚えています。
それでも救いだったのは「バニシングツインは、もう片方の赤ちゃんにはほとんど影響しない」ということでした。
事実、筆者はその後無事に出産を迎え、一児の母となりました。
あの時産まれた娘は、きっともう1人の分も生きているのだと思えて、日々感謝とともに暮らしています。
バニシングツインについて、覚えておいてほしいこと
ここまでバニシングツインについて、筆者の経験談も添えながらお話ししてきました。
いかがでしたでしょうか?
双子の妊娠が分かったとき、たくさんの情報を調べてバニシングツインというものを知って不安に思ったり、または筆者のように実際に体験して、深い悲しみを受けるママさんもいらっしゃるかと思います。
しかし、残念ながらバニシングツインは防ぎようもなく、ママ自身の頑張りで予防できるものでもありません。
だからこそ、不安にばかりとらわれないで、せっかく授かった赤ちゃんとの時間を、大切に過ごしてください。
そして、もしバニシングツインが訪れたとしても、どうぞご自分を責めたりせず、ご自身の心と身体をいたわってあげてくださいね。
お腹にいる、もう1人の大事な命を大切に育んで、どうか心安らかに出産の日を迎えられますように。
そんなママの皆さんを、心から応援しています。