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発達障害児の療育はいつから?申請方法や内容を実体験と共に解説!

発達障害児の療育内容は? 子育て・育児

私は保育士であり、発達障害(自閉症スペクトラム)を持つ9歳の娘と、グレーゾーンの6歳の息子を持つ母親です。
2人とも3~4歳から自治体の発達センターで療育を受けてきました。
子どもの発達障害は、主に1歳6ヶ月健診や3歳健診で小児科医や保健師から指摘されるか、年中児〜小学校低学年で園や学校から発達検査を勧められて相談に行くケースが一般的。
その後専門機関の判断で、必要に応じて療育への参加を促されます。

しかし、自治体によって取り組み方も違い、内容や頻度に個人差も大きいため、療育とは一体何をするのかが分かりづらく、不安に思う方も多いのではないでしょうか。
医療機関で発達障害と診断されても「療育は別の専門機関で受けて下さい」と言われることが多いので、手続き等に戸惑う方もいらっしゃると思います。
公的な療育支援を受けるためには、証明書の申請など、いくつかの段階を踏む必要があります。

現在、療育には、自治体による公的施設の他に、民間の法人等が運営する事業所も増えてきており、本人に適した療育環境・方法を選ぶことも可能です。
今回は、療育を受けるまでのプロセスや、施設情報、療育の内容やその効果についてもご紹介します。

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療育とは?

「療育」は、整形外科医高木憲次氏が「肢体不自由児の社会的自立を目標に、医療と教育を並行してすすめることが重要」という自身の概念を基にうみだした言葉です。
その後、高松鶴吉氏の考えに基づき「すべての障害のある子に育児支援を」という動きが拡大しました。

専門家によって療育の細かい定義や捉え方にはばらつきがありますが、共通する考え方としては「障害を持つ子どもの発達を促進し、自立した社会生活を遅れるように支援するための取り組み」と言えるでしょう。
また、必ずしも医療支援を必要としない場合も多くあります。

我が子の場合

私の子ども達が通った自治体のこども発達センターでの説明は以下の通りでした。

療育とは

  • 発達を促すこと
  • より適応的に生活できるように支援すること
  • 本人が困難さを感じることはサポートし、得意なことは伸ばして行く

支援のポイント

  • 具体的なスキルを身につけていく
  • 目標はスモールステップで設定する
  • 「自己効力感(自分はできるんだ、という気持ち)」を育てる

療育開始までの流れ

発達障害児の療育は、自治体の福祉サービスのうち「児童発達支援」に当たります。
このサービスは「受給者証」の取得により自己負担額が1割(所得に応じて上限あり)で療育を受けることが出来ます。サービス内容は自治体によって違い、給付は定期的に更新されます(我が子達は1年更新でした)。

また受給者証は自治体の定めた審査で受理されなければ交付されないため、「支援が必要である」と公に認められているという証明でもあります。そのため公的な療育施設ではもちろん、民間でも多くの事業所で受給証の取得を必須としています。

但しこの証明書は、障害者手帳とは全く別ものであり、障害者手帳を持っていても受給者証がないと福祉サービスを受けることは出来ません。逆に、障害者手帳を持っていない又はその基準に達していなくても受給者証の交付を受けることが出来ます。

受給者証の取得方法

初回の一般的な取得の流れは以下の通りです。

  1. 通いたい事業所を探す
  2. 事業所の受け入れ内定後、面談で内容や利用頻度(自治体によって最大利用日数が異なる)等を相談する
  3. 事業所との契約内容を基に「サービス利用計画書」を作成し、その他必要書類とを揃え、受給者証の申請を行う
  4. 受給者証交付
  5. 受給者証に記載の給付期間と利用回数に準じて利用開始

申請書類について

申請書類は自治体の窓口(主に児童相談所や役所の障害福祉課)や福祉事務所でもらうことが出来ます。

受給者証を申請すると「障害児相談支援」が受けられます。専門の相談支援事業所で、提出必須書類である「サービス利用計画書」の作成と、更新時の修正・確認を代行してもらうことが可能です。

参考までに、我が自治体の公立のこども発達センターは相談支援事業が完備されており、利用計画書の作成や役所への提出などの事務手続きはほぼ全て職員の方々がやって下さったので非常に楽でした。

療育手帳について

手帳の名前につい惑わされますが、療育手帳をもっていても受給者証がなければ療育は受けられません。また療育を受けるために必ずしも必要なものでもありません。

主に知的障害のある子どもを対象としており、自治体の審査を受ける必要があります。

取得することで様々なサービス(保護者の免税、手当の支給、交通運賃の割引など)が受けられ、将来特別支援高校に進学を希望する際や、障害者雇用での就職の際の証明書として提示することが出来るので、お子さんの状況によっては取得するメリットもたくさんあるでしょう。

ただし、身体障害者手帳や精神保健手帳と違い、法で定められた制度ではありません。
自治体によって、名称も愛の手帳、みどりの手帳など異なる場合があり、判定基準(多くは知能指数70~79以下)やサービス内容にもばらつきがあるため、利用に際しては居住地の情報をよく確認して下さい。

療育が受けられる場所

公的に受けられる療育支援には様々な種類があります。

まず、施設に入所して受ける「入所支援」と自宅から通って受ける「通所支援」に大きく分けられ、その中でも医師による治療も併用する「医療型」と医療行為を必要としない「福祉型」があります。

入所支援

<福祉型施設>
主に、重度知的障害児、肢体不自由児、重症心身障害児、盲ろうあ児等が対象です。しかし状況に応じて対象以外の児童も受け入れることがあります。

<医療型施設>
福祉型施設に加え、肢体不自由児の理学療法や機能訓練のほか、医療的管理下の支援を提供する機能が備わっています。

通所支援

<福祉型施設>
児童発達支援・放課後等デイサービス
3歳以下は親子で、3歳以上は子どものみで療育に参加します。
一般の幼稚園・保育園に通うのが難しい子どもが毎日送迎バス等で通う単独通所と、放課後や長期休み等に月数回程度通うものとがあります。

在宅児等訪問事業
子どもの状態や家庭の事情で通所が難しい場合に、保育士等が自宅へ訪問し、療育的指導や情報提供等を行います。

障害児一時保育
緊急時等に預かり保育をしてもらえます。

保育所等訪問支援
支援員が保育園等に訪問し、専門技術や関わり方等の指導・アドバイスを行います。

<医療型施設>
主に肢体不自由児の理学療法や機能訓練の他、医療的な支援が受けられます。

一般的に、発達障害のみを持つ子の多くは「通所支援」で「児童発達支援・放課後等デイサービス」事業の中の療育を受けることが多いです。我が子達もこの支援を利用し、現在も継続中です。

場所としては、主に自治体の「療育センター」「発達支援センター」などがつく名称の施設で受けることが出来ます。また民間の事業所でも児童発達支援サービスが受けられるところは増えて来ています。
尚、ADHDでコンサータやストラテラ等の処方を受ける場合は、医療型通所施設(小児科に併設されていることもある)での療育を勧められる場合があります。

居住地域の施設情報に関しては、役所の障害福祉課、保健所、児童相談所、保育園・幼稚園・学校などで得ることが出来ます。

他にも、福祉サービス事業ではない療育教室もたくさん開設されていますが、受給者証の利用が出来ないため全額自己負担となります。

療育の内容

個別療育

子どもと臨床心理士がマンツーマンで行います。
その子の状況・進度・タイプに応じ、言語・作業・運動・コミュニケーション等様々なアプローチを用いて療育が進められます。

集団療育

集団行動でのコミュニケーションや社会的スキルを学びます。
子ども5~6人の小集団に対し、取り組みによって保育士・臨床心理士・作業療法士などが適宜関わります。
基本的に、1~3歳児は親子で、3歳児以上は子どもだけで参加します。

小学校への就学支援療育

年長対象の集団療育です。
就学に向けて、実際の学校生活を想定した様々な取り組みの練習をし、見通しを持って入学出来ることを目的とした支援です。

指示理解を深め、班行動や集団の中での振る舞い方などを学び、最終的には一斉活動に取り組みます。

親への支援

ペアレント・トレーニング

保護者に向けた障害についての学習支援です。
子どもの特性を深く理解し、家庭での効果的なアプローチや、園・学校との関わり方、保護者自身の負担軽減テクニックなどを学びます。

個別での指導と、同じような特性を持つ子の保護者数人と心理士・保育士等でのグループワークとがあり、併用されることもあります。

個別相談

保護者の動揺や負担が大きく、精神的に不安定になるケースは珍しくありません。
その場合には、臨床心理士と1対1で相談することが可能です。

ただし療育専門施設では医療的な処置(点滴や内服薬の処方等)は出来ないので、状況に応じて心療内科等の受診を勧められることもあります。

我が子達が受けた療育

2人とも、

  1. 電話での発達相談
  2. センターで親子面接と発達検査
  3. 受給証の取得
  4. 定期通所開始

という流れでした。
療育はいずれも、降園後の15~16時から45分程度でした。

娘が受けた療育内容

課題

乳児期からこだわりの強さ、視野の狭さ、感覚過敏があり、同年齢集団の中で他児とどう関わればよいのか分からず、常にパニックをおこしていました。

結果、自分を押し殺して受動的になることでやり過ごすパターンが定着してしまい、イジメを受けてもヘルプサインが出せず、降園後の癇癪や悪夢にうなされる日々が続いていました。

支援目標

  1. 大人と1対1で円滑なコミュニケーションをとる方法を学ぶ
  2. 1が出来るようになってきたら、同年齢集団のなかでコミュニケーションを学ぶ機会を持つ
  3. 大人の介在の少ない同年齢集団の中で自立した積極的な関わりを持てるようにする

個別療育/月2回(4~6歳)

1回は娘と心理士でのプレイセラピー、もう1回は母親のみでペアレント・トレーニングを受けました。

主に、本人の得意なパズル・折り紙・ドリル・ボードゲームなどを介在させながら、心理士と気持ちを共感し状況を共有することで、「会話を楽しむ」「自分の話をし、相手の話を聞くというやり取りの練習」をしました。

回数を重ねるうちに、少しずつ「ゲームに負けてもパニックにならないでいられる」「興味の無いことにも挑戦してみる」など、本人に負荷をかけていく訓練にも発展していきました。

就学支援療育/月1~2回(年長児の1年間、個別と併用)

娘と似たタイプの子ども6人と保育士・心理士・作業療法士など数名でのグループワーク、その間に別室で保護者と心理士2名でのペアレント・トレーニングに参加しました。

まずは、教室を模した環境の中で「座り方」「返事の仕方」「手の挙げ方」など基本的な所作を学び、個別課題から班行動、集団での勝敗のあるゲームなどを経験し、後半は「音楽会」をテーマに全員で合奏をしました。

(年長の3月で幼児の療育は終了となり、現在は別の公的施設の療育に通っています)

息子が受けた療育内容

課題

先天性の持病の治療で生後すぐから入退院を繰り返したことにより、発達の遅れが目立っていた息子。
発達検査ではアンバランスな点は目立たず、発達障害としてはグレーゾーンで、経験不足による遅れがある、との診断でした。

また過剰適応型で、集団での疲労やストレスが体調に影響することも分かり、就学支援等の集団療育は受けず個別のみで課題に取り組むことにしました。

個別療育(3~6歳)

まずは、本人の大好きなウルトラマンをモチーフにしたパズルやドリルなどを心理士さんが作って下さったり、作業療法室でブランコやバランスボールを楽しんだり、「家族以外の大人と安心して会話を楽しむ」「興味の無いこと、未経験の分野に少しずつ挑戦する」等の練習を繰り返しました。

年長からは就学に向け「机に向かって課題に取り組む」「ヘルプサインの練習」「自分の意志や考えを自信を持って大人に伝える」等を頑張っている最中です。

親が受けたペアレント・トレーニング

約5年間、個別と集団で子ども2人分のトレーニングを受けました(個別では現在も進行中)。
子どもそれぞれに対しては身につけるべきスキルが多少違うので時々混乱しますが、基本的には以下のような事を一貫して繰り返し学んできました。

  • 悪いのは方法と環境であって本人の怠惰や反抗ではない
  • 本人の理解しやすい方法で提示する
  • 子どもの「やりたいけど出来ない」「やってみたい」「やってみたけど出来なくてくやしい、つらい」という気持ちに共感する
  • 僅かな一歩でも進めたら(あるいは現状維持でも)褒める・認める
  • 親自身の体調管理(特に母親と子どもの体調はシンクロしやすい)

    療育の効果は?

    療育をうけて何が変わるの?

    発達障害は病気ではなく、持って生まれた脳のタイプなので、治療して治るというものではありません。
    まずは周囲の大人がその特性を理解し、本人を取り巻く環境とどう折り合いをつけていくかを考えていくことが重要です。

    ですから、療育を受けたからと言って「○○が解決した!」というようなわかりやすい効果がみられるとは限りませんが、本人の能力を発揮しやすい環境を整え、問題を克服する力を高めていくことが可能です。
    また、自分の体験からも、以下のようなメリットを得ることが出来ると思いました。

    • 専門家のアドバイスのもと、その子に合わせた具体的な対処スキルを身につけられる
    • 本人が家族以外の大人に認められ、たくさんの成功体験を積むことで、親子共に自信が持てるようになる
    • 子どもの能力や長所を知ることが出来る
    • 同じ悩みを持ち情報交換出来る仲間に出会える(集団療育の場合)
    • 「いつでも相談出来る場所がある」という安心感を得られる

    療育は早く始めた方がいいの?

    療育は、開始が早ければ早い程効果も大きいと言われています。
    それは、出来る限り脳が柔らかく吸収の良い時期に沢山の成功体験を積むことで、しっかりと自己効力感を育み、持っている能力を伸ばしていくことが可能だからです。

    また、発達障害を持つ子が問題を抱えやすいのは主に対人関係においてですが、保護者の理解が遅れたために誤ったしつけをしてしまったり、偏見や誤解のもとにイジメや非難を受け、自信を失ってしまう子どももいます。

    特に小学校中学年〜思春期は、大人の手を離れて自立した友達関係を構築していく時期ですので、支援が入りにくく問題が深刻化しやすくなります。
    睡眠障害、摂食障害、小児うつなどの二次障害を引き起こし、不登校や自傷行為に発展するケースも少なくありません。

    これを防ぐためには、大人が全面的にサポート出来る幼児のうちから、特性や課題について学ぶ場を持つことで深く理解し、問題に対処していくスキルを身につけておくことが大変有効だとされています。
    また早い段階で支援体制を固めておくことで、いざと言う時にも迅速な対応が可能となります。

    療育を体験して感じたこと

    娘も息子も、療育を嫌がったことはなく、現在も楽しく通っています。
    担当心理士からは「疲れている時は無理させず休ませるように」と言われていますが、本人は「行って先生と遊びたい、しゃべりたい」と言うので迷う程です。

    スタッフにも様々なタイプがいらっしゃいますが、どの方も本当によく配慮してみてくださいましたし、色々な大人の方に出会えたことも本人には良い経験でした。(どうしても担当と相性が悪い場合は変更も可能です)

    ただ、2人とも、本来の特性は変わらず、具体的に療育の効果があるのかと言われると正直はっきりとはわかりません。
    課題は日々更新され、終わりの無い戦いをしている気持ちにもなります。

    しかし、「自分の味方になってくれる大人がいる」「園や学校以外に安心して学べる場所がある」という2点が彼らの精神的な支えになっていることは強く感じます。

    また、私自身も、子どものトラブルがあっても「心理士に相談しよう、それまで頑張ろう」「いざとなったら心理士に介入してもらおう」など、やはり心理的な安心感を得ています。

上手な療育活用法

現在、特に都市部では児童発達支援の需要が激増しており、公的施設の療育は空き待ち状態が続いています。
そのため、受給者を取得出来ても、緊急性無しとされれば療育開始まで数ヶ月待つケースも多く見られるようになっています。

そこで、療育センター以外にも児童発達支援事業を行っている民間事業所を探してみるのも良いかもしれません。関東圏ではLITALICO、STEP、TEENSなど、受給者証が利用出来る放課後等デイサービスを提供している大手事業所が次々に教室を開設しています。

また、公的施設で主に療育を受けながら、必要に応じて民間の教室等で補足する方法もあります。ABA(応用行動分析学)に特化した教室や、発達障害児専門の体操教室などを併用している方もいらっしゃいます。
また一般の学習塾や運動教室などでも、発達障害児を多く受け入れている教室があります。

相性や本人の体力的な問題等にはよく配慮することと、信頼に値しない団体も数多く存在しますので注意が必要ですが、療育の方法は必ずしも一つではありません。

大切なのは、専門的で信頼出来る公的な相談先をしっかり確保すると共に「子どもが安心して楽しく過ごせる場」を1つでも多く世の中に見つけていくこと。
家族以外に、より多くの大人の温かい目が届けば、本人の世界が広がるだけでなく、また新しい可能性や長所を見つけ伸ばしてもらえることもあります。

興味があることには是非挑戦し、色々な支援や指導法を試しながら、お子さんに合った能力の伸ばし方を見つけていって下さい。

発達障害と療育のまとめ

療育は、そんなに難しいものでも堅苦しいものでもないことが、わかっていただけたでしょうか?
私は、幼児期の療育は、本人のためになることは勿論ですが、親が得るものもかなり大きいと思っています。

療育を受けるためには、保護者が明確な目的をもつことが求められます。
これを基に専門家の見解のもと段階的に計画を立て、目標を達成するために効果的なアプローチはなにか、どの程度組み込むか等を決めていくためです。
ですから、面談に際し「何に一番困っているのか」「療育を受けることで子どもにどうなってほしいのか」の2点について考えをまとめておきましょう。
さらに、妊娠中〜乳児期の様子や、子どもの困りごとに関するエピソードには、療育計画を立てるうえでのヒントがたくさんあります。母子手帳や育児日記等を見直し、出来るだけ詳しく書き出しておく等しておくと、効率よく話を進めることが出来ます。

小さいうちは特に、親=家庭という揺るぎない「安全基地」があることで、子どもは安心して世界を広げ、未知なることに挑戦して能力を伸ばしていくことが出来ます。

しかし、発達障害児を育てるのは本当に大変。息つく間もありません。
さらに、まだまだ偏見や誤解も受けやすいため、特に母親は1人で悩みを抱えがちです。
親が精神不安に陥り家庭生活の不和が生じて、子どもの成長を妨げてしまうケースも多く見られます。

ですからまずは、親自身が安心できる相談先を確保する意味でも、療育を勧められた場合は一度トライしてみることをお勧めします。